男性不妊の特徴や原因について紹介するブログです

北九州の病院の泌尿器科で働く男性不妊専門医です。日本でも徐々に認識が高まりつつある男性不妊症。男性不妊の治療法や原因についてブログで紹介していこうと思います。

Tag:精索静脈瘤

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精索静脈瘤は精巣の静脈に血液が逆流しているために、細い静脈が拡張して「こぶ」のようになっているものです。陰嚢上部での蔓状静脈叢がふくれ、うっ血している状態を指します。

思春期より後の男性によく発生する病気で、この精索静脈瘤は、不妊治療で受診する男性では25~40%に認められますが、一般男性においても約10~15%に存在するものです。

自覚症状を訴える方は比較的少ないですが、中には陰嚢部の違和感や鈍痛、陰嚢の腫大、腫瘤を自覚される方もおられます。

実際に、男性不妊症の患者さんにおいての頻度が高いことから、静脈瘤を治療すれば精液所見は改善し、子供ができやすいと考えられます。

解剖学的に見て、精索静脈瘤はほとんどが左側にだけ発生します。なぜなら左内精索静脈は左腎静脈に還り、右内精索静脈は下大静脈に還ります。この違いが、左側にのみ血液の逆流が起こり、精索静脈瘤が発生しやすい理由なのです。

精索静脈瘤のある男性に精子形成不全が起こるメカニズムは完全には解明されていませんが、腎、副腎の代謝物の精巣への逆流、血流のうっ滞による精巣内の低酸素状態や陰嚢内の温度上昇、また下垂体-精巣系に関する内分泌(ホルモン)異常などを原因とする説があります。

実際に、精索静脈瘤によく見られる精巣温度の上昇は、精子形成におけるDNA合成能力や精細胞の減数分裂能を低下させることがわかっています。

精索静脈瘤の診断は、立ち上がった状態で腹圧をかけていただき、陰嚢を触診し、精巣の静脈が太くふくれているかどうかを診ます。診断を確定するためには陰嚢の超音波検査(エコー検査)を行い、静脈への血液の逆流または静脈の拡張を確認します。

静脈瘤はその程度によって、触診でグレードーから3に分類されます。また、触診ではわからないものの超音波検査で診断できる静脈瘤を、サブクリニカル静脈瘤といいます。

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男性不妊の原因で多い精索静脈瘤は左側の陰嚢の周囲に血管の塊ができて、冷やすことができなくなり、陰嚢内の温度が上昇してしまう病気です。

逆流血の影響で精巣内の酸化ストレスも増え、男性不妊の原因になることもあります。比較的簡単な手術で除去することができるのですが、普通は自覚症状がなく、見過ごされることも多いみたいです。

睾丸の付け根あたりに、血管がギョロギョロと浮き出ていたら、精索静脈瘤である可能性があります。また、精巣には、がんをはじめとする他の病気が起きることがあります。タマにはじっくり、観察し、触ってみることをお勧めします。

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